音と映画と正門とVOL.04『ボヘミアン・ラプソディ』感想メモ

まずはAぇ! groupデビューおめでとうございます! 京セラ、素晴らしかったな。気合いの入った彼らのパフォーマンス、あの瞬間の観客のボルテージ、一体感、今思い出してもじわりと涙がにじみ出るような、そんな素敵な時間でした。伝説のライブに立ち会ったのかも。ふふふ。

 

さて、今回、VOL.04で正門さんがお話しされているのも、伝説と謳われるライブエイドでのクイーンのパフォーマンスを追体験できる映画『ボヘミアン・ラプソディ』。今もなお、世界的に人気のロックバンド・クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーの生涯を描いた伝記映画です。

 

 

VOL.01のメモでも書いたけど、まいジャニの末澤風雅漫才の冒頭「おおいボヘミアン・ラプソディのマイクの位置だあ!」の元ネタね。末澤風雅漫才が好きすぎる。

 

そしてそして! 今回もフレディオマージュなスタイリングが素敵。前髪なしが好きすぎるから飛び上がってしまった。劇中でラミ・マレック扮するフレディが醸し出す危うさや繊細な色っぽさも彷彿とさせます。私、正門さんに『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』のジョン役みたいなのしてほしいんだけど、今回のお写真見て尚更思った。

 

脱線したけど、あらすじはこちら。

ギタリストのブライアン・メイとドラマーのロジャー・テイラーに自身を売り込みバンドのボーカルとなったフレディは、1年後にベーシストのジョン・ディーコンを迎えクイーンを始動。楽曲は大ヒットし、世界的なスターとして大成功を収めるも、フレディはセクシャリティなどさまざまな問題に苦悩し、孤独を深めていく。

1991年に45歳の若さでこの世を去ったクイーンのボーカル・フレディ・マーキュリー。彼の華やかな活躍の裏の物語を、表題でもある「ボヘミアン・ラプソディ」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」といった名曲の誕生や「ライブエイド」の圧巻のパフォーマンスを再現しながら描く。

 

第91回アカデミー賞では作品賞含む5部門にノミネートし、主演男優賞・編集賞・音楽編集賞・録音賞の4部門を獲得。社会現象ともいえるヒットを飛ばしたものの、批評家の評価は芳しくなかったという稀有な映画です。

 

■初めて観るなら、できれば劇場で……!

伝記映画という位置づけなものの、かなりショー性が強いのもこの映画の特徴だなと思います。音楽総指揮はクイーンの現メンバーのブライアン・メイロジャー・テイラーが担当し、劇中の楽曲はほぼフレディ自身の音声を使用していることでも話題になりました。

そっくりさんの音声も使ってるらしいんだけど、私はちゃんと判別できてません。また観に行きたいな。なんでかわかんないけどTOHOシネマズ日比谷でずっとやってるんだよね。未見の方は、正門さんも言っていたけど、できればでっかいスクリーンで観ることをおすすめします。没入できるはず。

 

というか、多分劇場で観ないと良さがちょっと減っちゃうかも。というのも、この映画って最後のライブエイドを見る劇中の観客の熱を共有しているからこそ、ここまで熱狂的なブームになったと思っていて。

 

P100より

――クライマックスの「ライブエイド」は歴史的な出来事でした。映画ではかなり忠実に再現されていますが、どうご覧になりましたか?

正門「あれは映画館のでっかいスクリーンで観て正解でした。いや、気持ち良かった!」

 

わかる~~ってなった。圧巻のパフォーマンスを大画面で浴びることで映画を観る側がその熱に巻き込まれ高揚してくることが、この映画の醍醐味だと思う。

前述でも触れましたが、実は批評家からの評価はあんまり高くなかった『ボヘミアン・ラプソディ』。監督が途中降板したこともあり、編集賞もらった割につぎはぎ加減が目立ったり(編集のジョン・オットマンも自分でひどいって言ってる)、せっかくのフレディ・マーキュリーという題材を大して深掘りせず陳腐なストーリーに仕立てているという声は、往年のファンからも聞こえていた記憶が。

ただ、最後のライブエイドの熱狂にすべてのボルテージを持っていったと考えると、個人的にはそんなに違和感がなくて。ストーリーというより、「音楽体験」に重きを置いた映画なのかなと思ったりしました。クイーンの重厚感あるサウンドだからなせることなのかもしれないですね。

 

確かにすべて描き出すにはフレディ・マーキュリーという存在が複雑すぎるのはあるけど、ストーリーも単調なわけではないのかなと。起伏もあるし、何よりラミ・マレックの演技が本当に素晴らしい。連載内で言及していたメアリーとの別れのシーンも切なくて。あと、マイアミの音量のシーンも好き。それも史実とは少し異なるらしいけど、シネスクの編集者さんが言っていた通り、「映画ならでは」のシーンだなと感じます。そう考えると、「音楽」「映画」「史実」のいいとこどりなのかも。

 

■Aぇ! groupの話をしてる?

今回の連載、読みながらこう思うことが多くて。ちょっと列挙します。

 

P99

正門「色んなルーツを持つ人が集まってきたというか。で、ひとつのアイディアが出ると、みんなどんどん乗っかってくる、その瞬発力がカッコいいと思いますね。」

 

P101

――パフォーマーとしてのフレディ・マーキュリーに、共感できる部分はありますか?

正門「どうやろ…。共感というより、憧れますね。カリスマ的な感覚があって、なおかつそれを形にする力があるじゃないですか。何かを思いついても形にならないことって多いんですよ。そんな中で、形にするだけでなく、彼らはそれらの曲を観客と一緒にライブで育てていってる感じがするんですよね。こういう彼らのやり方がクイーンというジャンルを作り上げたという気がして、ただただ感嘆します。

 

オタク、みんな「Aぇ! groupさんの話をしてる?」ってなりましたよね?? さまざまな個性が集って、アイデアを形にできる力があって。京セラで晶哉が「Aぇ! groupってジャンルを作って、それを王道にする(ニュアンス)」って言ってたけど、それもすごくリンクして「Aぇってクイーンだったんだ…」ってなりました。Aぇ! groupも同じことは2度やらないのかも。いや、昨日ヤンタンでめちゃくちゃ天丼してたか。

 

映画の内容はあんまり関係ないんですけど、その後のクイーンとボウイの話も好きで。自分がすぐ読めるように写経させてください。

 

P101

――劇中でフレディは、”観客の欲しいものを与える”という、エンタメ的なパフォーマーとしての姿勢を語ります。一方で、彼らとコラボしたこともあるデヴィッド・ボウイのように、自身のアートにこだわるパフォーマーもいます。正門さんや、Aぇ! groupはどちらですか?

正門「難しいですね…。どっちかというとクイーン寄りやけど、ボウイの感覚も忘れたくない。この世界に入ってくる人のほとんどは、最初はボウイだと思うんです。でも、やっていくうちにクイーンのような感覚の大事さや強さが理解できてくる。クイーンにしても、最初はボウイのようにアート的な表現だったと思うんです。その中で、発表した作品が受け入れられて、育ってきて、みんなに求められるようになる。その時々でパフォーマーは、”じゃあ、どういう形でみなさんに、求められるものをお届けできるんだろう?”と考えるんですよ。僕らが表現したいことと周りに求められることが違ってくるのはツラいけど、それでも自分を貫く強さは持っていたい。一方で、求められることに嬉しさを感じて、愛情を持って返すのも正解やと思います。」

 

ここがもうめちゃくちゃ好きで。正門さんの賢明さと芯の強さが全部詰まってる。特に「それでも自分を貫く強さは持っていたい。」が、大好きな正門くんだなと思いながら読んでいました。

 

映画の内容とリンクしているわけではないんだけど、このタイミングで、表現者でありエンターテイナーであるフレディ・マーキュリーを描いた『ボヘミアン・ラプソディ』を語るの、すごく突き刺さる言葉が多かった。いつもよりさらに時間をかけて読んでしまいました。

 

もはやクイーンではなくAぇ! groupさんの話になっちゃうけど、自身の表現と需要を見極めながら、”Aぇ! group”というジャンルをより一層確立していく姿を見られるの、楽しみだなあ。これからもたくさんの伝説に立ち会えますように。ただのデビューのお祝いになっちゃったわ。

 

 

 

音と映画と正門とVOL.02『ファイト・クラブ』感想メモ

ついに連載タイトル決定だ~~~。ぜんぶよかったけど、正門くんのお名前が入っていることが初連載としてとても重要で素敵なことだなと感じました。タイトルより語ってほしい映画を絞るのに死ぬほど時間がかかったな。オタクたちに何をリクエストしたのか聞いて回りたい。

 

タイトルも決まり、連載も本格始動。記念すべき最初のテーマは『ファイト・クラブ』(1999)ですって。

※日本語字幕がついてる公式がなかった

 

まず、誌面のお衣装ってきっとタイラーオマージュ(派手なシャツに革ジャン)だと思うんだけど、今後も映画の登場人物を意識した服着てるの見られるのかな!? 嬉しすぎ。相変わらず派手シャツ似合いますね。

 

さて、このセレクトに対して正門くんは、

 

「1本目にしては、ちょっと攻め過ぎたかな…という気もしますよね(苦笑)。これを読んだ方が、初めてこの映画を知って、観てみたら“何、これ!?”となり兼ねない気もします。」

 

とのこと。本人も好きな映画に上げていたし、映画連載という軸で見ると、正直そこまで違和感はない(むしろ数多語られてきただろうと思う)。なんなら監督はMV出身で、『音と映画と』というコンセプトにはめちゃくちゃ相応しいとさえ思う。なんだけど、「アイドルが語る」映画連載の1回目としては少し攻めているなと私も思った。

 

いやほんと、オタクターゲットにアイドル連載やらせるなら、絶対に一発目は『ファイト・クラブ』じゃないよ。私はこのチョイスにシネスク編集部の本気を勝手に感じて喜んでいます。それだけ正門くんの映画愛と造詣の深さが伝わっているのかなとも。きっとオタクだけじゃなくて、幅広い層の映画好きに刺さるコンテンツになるんだろうな。

 

そんな『ファイト・クラブ』、あらすじとしてはこんな感じ。

大手自動車メーカーに勤め、自社製品のリコールの調査のため日々飛び回っているヤングエグゼクティブの主人公「僕」は、不自由ない生活を送りながらも長らく不眠症に悩まされていた。症状を改善するため、末期がんや結核患者などが集まる自助グループに患者と偽って通い、共に泣いては妙な安らぎを得ていた「僕」は、自分のその救いを邪魔するマーラにイライラとしている。

そんなある日、彼はタイラーと名乗る危なげな魅力を持つ男に出会う。ひょんなことからタイラーの住居に身を寄せることになった「僕」。住まわせる条件としてタイラーが言い出した「本気の殴り合い」にのめり込んでいくうちに同志が集まり、秘密の拳闘クラブができあがっていくが、カリスマ的なタイラーの魅力によって活動はだんだんと過激になっていって……。

 

『セブン』や『ソーシャルネットワーク』のデヴィッド・フィンチャー監督が、チャック・パラニュークの小説を映画化。フィンチャーは『セブン』『ゲーム』に続いたこの『ファイト・クラブ』で作家性を確立したと言われています。ちなみに私は『セブン』が好き。

 

フィンチャーは最近Netflix映画作ってる印象。オスカー最多ノミネートの『Mank』(2020)、最新作の『ザ・キラー』(2023)もそう。後者は1日に映画館で観てきました。こちらも音楽がポイントだけど、正門くん見るかな。11/10からネトフリで配信もスタートします。

 

ファイト・クラブ』の主演はエドワード・ノートンとブラット・ピット(『セブン』でも主演してる)で、ヒロインはハリーポッターシリーズやティム・バートン作品でおなじみのヘレナ・ボナム=カーター。『フランケンシュタイン』に続いて彼女のゴスっぽいイメージが確立された作品でもあります(多分)。

 

公開当時は評論家から「暴力的すぎる」と酷評され、制作費の回収もできなかったそう。しかしCGをふんだんに使った実験的な映像や魅力的なキャラクター、難解な内容からじわじわとファンが増え、上映から20年以上経った今もカルト的人気が高い映画です。

 

サウンドデザインもめちゃくちゃ凝ってて、これはVOL.01のメモ書いた時も記載したけど人を殴る音は鶏肉にクルミを入れてそれを叩いたりしているそう。生々しい音へのこだわりが、この映画に凄みを与えているなと思う。あと、全編通して「ザ・ダスト・ブラザーズ」のデジタルな音楽で場を盛り上げるからこそ、最後のWhere is my mind? がすごく映えるんだよなあと。ギター弾いてる正門くん、見たいな。

 

以下はその他正門くんのインタビュー見ながら考えたことメモ。ネタバレになることも書いてます。映画に対する私の解釈も書いているから、そこら辺は適当に見てくれたらいいです。

 

■アイドル、どんな気持ちで見てるんだ?

P82より

――「ホエア・イズ・マイ・マインド?」という曲のタイトルも、自分の心がどこにあるのか分からなかった主人公を象徴しているようにも思えますが、彼の生きヅラさはどこからきたのでしょうか?

正門「消費社会というのはありますよね。タイラーのセリフにも“消費”に対して批判的な言葉がありましたし、後半はテロっぽい方向に話がいきますけど、タイラーはそれを壊したかったんだろうなあ。クレジット会社のビル群を破壊するのも、資本主義的な考え方の疑問というか。そういう意味ではリアルな話なんだけど、現代のファンタジーと言えるかも。」

 

「現代のファンタジー」言い得て妙だわ。正門くんの言葉選び、本当に素敵。

 

消費社会や資本主義について言及していたり、皮肉られているシーンはいくつもあるものの、セリフとして特に印象的なのは2つかなと。「僕」とタイラーが初めて飲むバーのところと、タイラーが闘技場で仲間を鼓舞しているシーン。

 

・バーのシーン

タイラー「我々は消費者だ。ライフスタイルに仕える奴隷。殺人、犯罪、貧困、誰も気にしない。そんなことよりアイドル雑誌や500もチャンネルがあるTV、下着に書いてるデザイナーの名前、毛生え薬、インポ薬、ダイエット食品…」

僕「ガーデニング

タイラー「何がガーデニングだ! タイタニックと海に沈めばいいんだ! ソファなんか忘れちまえ。パーフェクトを目指すことなんかない。頭を切り替えて、自然な生き方をしろよ」

 

3、4年ぶりに観たんですが、ここは毎回ドキッとしてしまって。主に「アイドル雑誌」の部分にだけど。英語は「Celebrity magazine」だからこちらがイメージするものじゃなくて、有名人のゴシップ雑誌みたいなニュアンスなのかなって思います。でも、そういった有名人の話に踊らされて消費しているという文脈ではあると思うから、個人的には改めて痛いところを突かれたな感があるんだよね。

 

以前のZeppで正門くんが「僕が発信する言葉を皆さんの好きなように受け取って、好きなように解釈してください」って言ってたレポを見たんだけど、その時にこの人はなんて聡い人なんだとびっくりしたのを思い出した。消費される側なんだとわかっているのだなと。正門くんもこの戸田奈津子訳で見ているかと思うので、なんか感じるところあったのかな~って考えてしまいました。映画の本質とはズレた話だったわ。

 

・闘技場のシーン

タイラー「職場といえばガソリンスタンドかレストラン。しがないサラリーマン。宣伝文句にあおられて要りもしない車や服を買わされてる。歴史のはざまで生きる目標が何もない。世界大戦もなく大恐慌もない。おれたちの戦争は魂の戦い。毎日の生活が大恐慌だ。テレビは言う“君も明日は億万長者かスーパースター”。大嘘だ。その現実を知って、おれたちはムカついてる」

 

いや、アイドルこれどんな気持ちで見てるん??? そこではないと思いつつ、ついついそう思ってしまう。

あとカトシゲさんもどんな気持ちで勧めたんだ。加藤シゲアキ先生推薦なのが地味に面白くてじわじわ来てます。前も何かで見て笑った気がするけどカトシゲ好きそうすぎ。舞台『染、色』を経た正門担は加藤シゲアキの薦めという情報を基に『ファイト・クラブ』見たらすごい笑うと思うんだけど、どうだった??

 

■時代を跨ぐシニカルなコメディ

この映画、キーワードとしてとても重要なのが、「ジェネレーションX(X世代)」。主にアメリカで1965年~1980年に生まれた世代のことを指すけど、彼らはベトナム戦争後のしらけた世の中で特に大義もなく、日々ただあくせく働きメディアや広告に踊らされながら生きることに必要のないモノを消費し続けている。男たちは時代に去勢され、戦う場もなく虚無を生きている。それに抗おうとしているのが、ファイト・クラブというわけだ。

 

連載では触れなかったけど、この映画メタファーとしてめちゃくちゃ男性器出てくるじゃないですか。睾丸ガンの自助グループも男性性が失墜した男たちを表しているし、志半ばで死ぬのがそのグループで出会ったボブなのも結局「タマなし」は男じゃないってことなのかなあと思ったりもする。連載、サブリミナル効果のところ話すかなと思ったけど、内容が内容なだけに言及はしてなかったな。音楽をはじめ他にも語るところがたくさんあったからなのか、はたまたアイドルだからなのか……。

 

それは置いといて。この映画は批判的に「マッチョポルノ」と称されたりしているし、私は意外なほどいる「この映画の良さは女の子にはわかんないよね」みたいな男性をぶん殴りながら生きているのだけど、本当にそうか?と思っていて。そのヒントが連載でも言及されていた「コメディ」にあるのではと。

 

後半で警察署長を脅すシーンがあるけど、

 

「世話になってる人間を逮捕する? 調理場の下働き、ゴミを集めてる奴ら、救急車の運転手、夜中に働く警備員。いいな、ジャマするな」

 

ってタイラーのセリフ。ブラピタイラーが言っている分にはいいんだけど、「僕」=「タイラー」の図式が成立した途端、おや?となる。男だらけのドキドキ秘密倶楽部も、タイラーが率いているなら違和感はないけど、これが「僕」だと話が違ってくる気がする。

 

だって、「僕」って本来資本主義の上の方の人なんですよね。若くして大手企業の役員職につき、高級マンションに住んでいた「僕」。今だって上司をはめて退職金を年収2年分ふんだくり、しばらく働かなくても遊んで暮らせる「僕」。そんな彼に付き従って、駒として働く「調理場の下働き」や「夜中に働く警備員」。これを皮肉と言わず、何と言おう?だなと。この「コメディ」というのをフィンチャーに問いかけたのが、元々社会階層の上に属していた超エリートお金持ち家系の異端児、エドワード・ノートンというのも感慨深いと思っています。これは完全に私が勝手に考えていること。

 

正門くんが言ってたように、パンツのまま街中を走り回ってるシーンもおもしろい。ていうかそもそも睾丸を取られることに異様にビビってるところからおもしろくない? 出血多量で命を落とすとか痛みとかじゃなくて、睾丸を切り取られる方にビビってると思うんだよな。正気を疑う行動への恐怖はあるかもしれないけど、やっぱメインは睾丸だと思う。

 

フィンチャーが、「この映画は女性の方が笑いどころをわかってるように思う」みたいなことを言っていたらしいんだけど、もしかしたら男性はこの映画に共感する部分が多すぎて客観的に見れない部分や別のところに目が行ってしまうみたいな傾向はあるのかもしれない。睾丸シーンも、多くの男性にとっては笑えないんだろうな。あまり性別で違いを考えたりはしたくないのだけどこればっかりは仕方ない。

 

そういえばトランプ大統領の主な支持層はジェネレーションXの男性だったらしい。まさに『ファイト・クラブ』で描かれるマッチョイムズに焦がれる労働者たち。20年越しに皮肉をかましてくるこの映画は、やはり興味深い作品だと思うのだ。

 

■タイラーは見ている

正門くんが心を掴まれていたコンビニのシーン、私もすごい好きなところで嬉しかったんですけど、この映画の伝えたいことってマッチョな理想とか消費社会への警鐘とかじゃなくて結局あれなのではとも思うんだよね。

 

P82

正門「なぜ急にコンビニの店員にそんなことしたの分からないし、優しいのか乱暴なのかもよく分からない。“なんやねん!?”と思うんだけど、気まぐれなところも含めて、なんかカッコいいんですよね。あのタイラーのセリフを聞いて、その日その日を無駄にしたらアカンなあ…と思いました。」

 

この映画の冒頭、警告文が流れるんですけど(この警告文をいちいち読んでる奴、そんな無駄なことすんな!みたいなこと書いてる。配信はないっぽい?)、最後「お前が自分を主張しないなら、その他大勢と一緒になるぜ」的なので締められてて。コンビニのシーンも相まって、夢を諦めて惰性で生きるな。一度死んだと思ってがむしゃらになって何者かになれ。のようなメッセージを感じる。

 

最後、ペニス(を模したフェイク画像。モザイクかかってないのはそのせいです。びっくりするかもしれないけどご安心?を)がサブリミナルされる理由もいろいろな説があるけど、タイラーはお前を見てるぜ、舐めた生き方してたらブッ殺すからなみたいな解釈もおもしろいなあって思ってる。

 

正門くんの言うとおり、無駄にしたらアカンなあ…と。でも正門くんはアイドルとして日々努力しながら生きているから何も心配いらないよね。タイラーが来るなら私のところです。

 

いろいろ取り留めなく書きすぎたな。他にも書きたいことたくさんあるけど、いい加減長いので終わります。『ファイト・クラブ』、ぜひオタクたちの論評を聞きたいところ。

これは余談ですが、ついでに永瀬廉主演、こじまさやも出てる『真夜中乙女戦争』(2022)見たら愉快だと思う。

 

ここまで読んでくださった方、お付き合いありがとうございました。『スクール・オブ・ロック』も楽しみ!

 

正門良規さん連載VOL.01(CINEMA SQUARE vol.143)

◆話題に登った映画(出た順)

 

宮崎駿君たちはどう生きるか(2023)』※上映中(2023/9/1現在)

最近観た映画①。誠也くんと話したかな。

 

是枝裕和『怪物(2023)』※上映中(2023/9/1現在)

最近観た映画②。

 

清水崇『忌怪島(2023)』※公開終了。2023/9/21~TSUTAYAレンタル開始?
最近観た映画③。大吾くん主演映画。私は怖くて見られてない。

 

デヴィッド・フィンチャーファイト・クラブ(1999)』

・サブスク配信:Hulu、Disney+、U-NEXT

「普段どんな映画を見ていますか?」という質問の回答の1つ。

次のジョーカーと共に「BGMみたいに、家の中で流しているだけの時もあります。」とのこと。『ファイトクラブ』は難解な話とカルト的な人気もあってその内容にばかり言及されがちだけど、サウンドデザインもいい。殴る音作るのに鶏肉にクルミ入れて殴って……みたいなことしてたはず。リアルな音を追求した結果なのか、「暴力的すぎる」と公開当時は酷評されたそう。

※日本語訳ついた予告がなかった。あらすじはこちらから。

正門くん、人殴る音聞きながら生活してる時があるんだな。以前も何かで好きだと言及されていた記憶。好きそう。

何度も見る映画の代表格のように思っているので、私も定期的に見返してしまう。

 

トッド・フィリップス『ジョーカー(2019)』

・サブスク配信:PrimeVideo

「普段どんな映画を見ていますか?」という質問の回答の1つ。

正門くんも言及している劇中曲「スマイル」は、元はチャップリンが映画『モダン・タイムズ』のために作曲したもので、劇中にもその映像が流れる。主題歌にも採用されている歌詞付きのものはジミー・ジュランテ版。

ジョーカーといえばDCのバットマンの宿敵だけど、原作では描かれていない誕生秘話を映画オリジナルで作ってる作品。

以前ダークナイトシリーズが好きだとおっしゃっていた気がするので、ダークなDC映画好きなんだろうな。ジャスティスリーグとかスーサイドスクワッドは刺さってなさそう。

 

ブライアン・シンガー(途中で降板)/デクスター・フレッチャー『ボヘミアン・ラプソディ(2018)』

・サブスク配信:Netflix、Disney+、U-NEXT

「音楽が主役といえる映画やミュージカルなどでは、どのような作品が印象に残っていますか?」の回答①。

クイーンのフレディ・マーキュリーの伝記映画。クイーンのブライアン・メイロジャー・テイラーが音楽総指揮で、フレディ本人の歌声を音源に使用したのも話題になりました(でも確かそっくりさんの歌声も混ざってたはず)。

まいジャニの末澤風雅漫才の冒頭「おおいボヘミアン・ラプソディーのマイクの位置だあ!」の元ネタ。

できれば劇場で観てほしい。今多分TOHOシネマズ日比谷でやってるんだよね。来週は9/7(木)にあるみたいなので都内で気になる方はぜひ。

 

⑦ケニー・オルテガマイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009)』

・サブスク配信:PrimeVideo、Netflix、U-NEXT

「音楽が主役といえる映画やミュージカルなどでは、どのような作品が印象に残っていますか?」の回答②。

2009年に急逝したマイケル・ジャクソンが、死の直前までリハーサルを行っていたライブ「THIS IS IT」ロンドン公演のリハーサル映像を基に作られたドキュメンタリー映画

「子供のころに観た映画では~が強烈に印象に残っています。」とのこと。公開当時劇場で見たなら中1かな。

※日本語訳ついた予告がなかった。あらすじはこちらから。
リハーサル映像を急遽まとめたものなので若干ファン向けではありますが、曲全部わかるから普通に楽しめるしグッとくる。

 

マイケル・グレイシー『グレイテスト・ショーマン(2017/日本公開2018)』

・サブスク配信:Disney+

「音楽が主役といえる映画やミュージカルなどでは、どのような作品が印象に残っていますか?」の回答③(ミュージカル映画として)。

グレショーの名前の元ネタ。19世紀に実在した興行師P・T・バーナムの半生を描いたミュージカル伝記映画です。劇中のミュージカルナンバーを『ラ・ラ・ランド』のベンジ・パセックとジャスティン・ポールが担当。

だからなのか『ラ・ラ・ランド』と比べていろいろ言う人がたまにいるんだけど、立ち位置が全然違う映画だと思ってるから比較にならないしうるせえなって思ってる。

 

ロバート・ワイズ/ジェローム・ロビンス『ウエスト・サイド物語(1961)』

・サブスク配信:U-NEXT

「音楽が主役といえる映画やミュージカルなどでは、どのような作品が印象に残っていますか?」の回答④(ミュージカル映画として)。

タイトルと、「昔、レンタル屋さんで借りて観たのを覚えています。」とのことなので1961年版。

大人気のブロードウェイミュージカルを映画化したもので、『サウンド・オブ・ミュージック』のロバート・ワイズとミュージカル版の演出をしていたジェローム・ロビンスが共同で監督をしてます。

昔の映画だから少し見にくいかもしれないのと、U-NEXTか、それこそレンタルしなきゃなので話の中身が気になるという人は2022年公開のスピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー(2021年/日本公開2022)』もおすすめ。今はDisney+にしかないけど。

・ウエストサイド物語(1961)

・ウエストサイドストーリー(2021/2022)

正門くんは「何がキッカケで観たかは覚えてないですけど、」と言っていたけど、ジャニーズ設立のカギとなった作品だからそういう話を聞いたり意識したりがあったのかな。

 

深田晃司『淵に立つ(2016)』

・レンタルのみ:PrimeVideo、TSUTAYA(プレミアムも?)、テラサ、Rakuten TV、DMM TV

「俳優で好きな人はいますか?」の質問に対して、大好きな浅野忠信さんのお話から出た映画。

第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を獲ってる作品。現在レンタルのみ。

浅野忠信でまず出てくるのが『淵に立つ』なのは「まじかよ~~~」って歓喜してしまった。監督が書いた小説版もあって、映画と結末が違うので、そっちを先に読んでもいいかも(電子しかない&少し読みにくいけど)。

 

蜷川実花人間失格 太宰治と3人の女たち(2019)』

・サブスク配信:PrimeVideo、Hulu、Netflix、U-NEXT、FOD、DMM TV

「対談したい方はいますか?」の質問に対して三宅純さんのお名前を出した際に、三宅さんが音楽を担当したこの映画について言及。

監督はAERAでAぇ! groupの表紙・グラビアを撮影してくださった蜷川実花さん。蜷川さんといえば極彩色で華やかな世界観が特徴だけど、本作は割と抑え目。太宰治の『人間失格』の映画化ではなく、太宰を主人公に『人間失格』の誕生秘話を描いているオリジナル作品なので注意。

私、ずっとこの小栗旬演じる太宰治を正門くんにやってほしかったから飛び上がってしまった。三宅さん、海外作品でも活躍している人なので、もし本当に対談が実現したらすごいなあ。

 

 

次回も楽しみ。最高連載ありがとうございます。